days of thousand leaves

文学研究者のひとりごと

湯河原へ

家族で湯河原まで行ってきました。


行き先は、作家・歌人の小嵐九八郎先生の仕事部屋。
息子も連れて遊びにおいで、というお言葉に甘えて、
久々におじゃますることになりました。



旬の地魚が並ぶ魚屋さんで金目鯛を仕入れた後、先生の
案内で千歳川のほとりに自生するクレソンやセリを摘みました。
クレソンを摘むなど、本当に久しぶりのこと。
(たぶん小学生の頃、福島にある母の実家の近くで摘んだ時
以来のこと)


川原には菜の花なども咲いていてきれいだなあ、などとぼんやり
考えていたら、これはだれかが勝手に「不法耕作」している
のだと先生が教えてくれました。こうした行為が、クレソンが
自生できるような生態系を壊してしまうのではないかとの
こと。


夜は金目鯛とクレソンのしゃぶしゃぶをご馳走になりながら
歓談。とはいえ、三歳の息子が同行しているので、ほとんど
息子の相手をしていただくばかりになってしまいました。
本当は、文学談議その他、いろいろとお話できたらよかった
のですが…。


お詫びの代わりに、ちょっとご紹介。


小嵐先生は、1月から上映されていた映画「真幸くあらば」の
原作者でもあります。


「死刑囚と、被害者の婚約者だった女性の恋愛物語」という
作品ですが、ちょっとロマンティシズム過多な感があった
映画に比べ、原作はもっと死刑制度そのものについて考えさせる
内容です。関心のある方はぜひご一読を。


図書新聞」で断続的に続いているインタビューのシリーズでも
死刑廃止へどう展望できるか」と題して、3月20日号では
弁護士の安田好弘氏にインタビューしています。


以下、安田氏の言葉を少しだけ引用します。


「人を殺すという点では、国家であろうと個人であろうと同じです。
どのような理屈をつけようとも、その実態はまったく同じです。」


「私たちは、犯罪を犯した人を処刑できるほどの絶対的な正義や
正当性をもちあわせていないと思うのです。絶対的な正義や
正当性は、つまるところ排除・抹殺と裏腹のものです。」


「私は死刑存置の人たちの感情や思いをしっかりと受け止めなければ
ならないと思うんです。死刑廃止の思想が存置の思想より優れて
いるとは思っていません。」


このように語る安田氏が提案するのは、次のようなこと。

 ・終身刑を創設する。
 ・加害者が贖罪し、被害者がそれを受け入れるためのチャンネルを
  確保する。
 ・市民が加害者と出会う機会を作り、犯罪が社会全体の問題だと
  認識するためにも、刑務所を民営化する。



本当は、こんな問題についてお酒を酌み交わしながら話をするために、
小嵐先生は招いてくださったのかもしれません。



またおいで、というお言葉に甘えて、いつかまたお邪魔します。
その時には、もっとたくさんお話をうかがおうと思います。