days of thousand leaves

文学研究者のひとりごと

坂口安吾研究会のご案内(ゲスト:佐々木中氏)

久々の更新ですが、安吾研の宣伝を―。



今回のゲストは、『切りとれ、あの祈る手を―〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』の
佐々木中氏です。


昨年刊行され『切手本』の略称(?)で賛否両論さまざまに話題となった
あの本ですが、私が記憶する限りたしか二度ほど、安吾への言及があり
ました。その佐々木氏が、安吾についてどのような話を聞かせて下さる
のか。


佐々木氏のファンの方はもちろん、佐々木氏に何か一言もの申してみたい
(?)という方も、ぜひぜひお越し下さい。もちろん、研究会の会員以外
の来場も大歓迎です(参加費無料、事前申し込みも不要です)。

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坂口安吾研究会 第二十二回研究集会


【日時】
 2011年3月26日(土)13:30〜
※中止となりました。

【会場】
 早稲田大学戸山キャンパス(東京都新宿区)
 33-2号館 第1会議室(キャンパスマップはこちら

【内容】
基調講演:
佐々木中氏(思想家・作家。現代思想、理論宗教学専攻)

「偽物の政治学坂口安吾と『ふるさと』からの脱却」

 坂口安吾について三つの観点から語る。それは「偽物」「平和」そして
「革命」という観点である。それはおそらく、「ふるさと」と「堕落」
という特権視されてきた安吾的概念の再検討を含むことになるだろう。
われわれを茫然とさせ続けている安吾の偉大さについて、それを一人で
も多くの人に伝えることに、少しでも裨益できれば以て瞑すべしと思う。


研究報告:

塚本飛鳥氏(青山学院大院生)
坂口安吾と日本古典文学」

 坂口安吾は作品中いくつかの日本古典文学を挙げている。作家活動の初期
においては特に近世の作品が多く、翻案という形が取られることは少ない
ものの、ファルス論中に例として取り上げられるなど軽視できるものでは
ないように思われる。今回の発表では、北条団水補筆・編『一夜船』の翻
案とされる「閑山」を中心として、それ以前での古典作品への言及を含め
ながら、戦前の坂口安吾による日本古典文学の取り扱い方について考える。


若松伸哉氏(愛媛大学
「同時代から見る〈愛〉と〈孤独〉—坂口安吾「紫大納言」を中心として」
 

 一九三八(昭和十三)年七月、坂口安吾は長編小説『吹雪物語』を竹村書房
より書き下ろしで刊行した後、三好達治が主宰した文芸雑誌『文体』に、
「閑山」(一九三八・十二)、「紫大納言」(一九三九・二)といった説話
体の小説を発表している。この両作品は一九四一年四月にスタイル社より刊行
される短篇集『炉辺夜話集』に収録され、その「後記」において安吾は、
「「炉辺夜話集」に収めた五ッの物語は「吹雪物語」の暗さにうんざりした
のち、気楽に書いた短篇をまとめたものです」と書き付けている。
 〈失敗作〉「吹雪物語」から新たな試みとしての説話体小説へ、安吾自身の言
や伝記を参照すれば、そのような流れが導き出されてくるのであるが、本発表
では作家論的な考察からいったん離れ、同時代の文脈のなかに安吾作品を置き
直すことで見えてくるものを考えてみたい。
 もう少し具体的に見通しを示しておく。本発表では主に「紫大納言」を対象と
して、この作品に描かれる〈愛〉と〈孤独〉について中心的に考察を行う予定
である。愛と孤独という問題については「吹雪物語」においても大きなテーマ
となっており、安吾矢田津世子の恋愛の反映を見るのが常であった。しかし、
同時代の文壇のなかで発信された言説を見る限り、〈愛情〉の問題は当時とり
わけ言及されるテーマの一つであり、同時代一般へと開かれる可能性を持つ
ものである。こうした同時代言説と比較することによって、同時代における本
作品の独自性を今回多少なりとも明らかにすることができればと考えている。
また、こうした観点から、「紫大納言」と同時に『文体』一九三九年二月号に
掲載された太宰治富嶽百景」との比較なども視野に入れる予定である。