days of thousand leaves

文学研究者のひとりごと

最近の仕事

最近の仕事は、以下のような感じです。


〔論文〕
文学史の彼岸―「文藝春秋」創刊と大正期の文芸メディア」

(宮原琢磨(編著)『21世紀の学問方法論(日本大学文理学部叢書)』(2013・4、冨山房インターナショナル)
様々な学問領域の方法論を概説する本の中で、文学研究に関する章を担当。今日の文学研究が旧来の「文学史」叙述を更新しつつ、文化史・メディア史といった観点から「文学の歴史」を考察する学問として進展している、といったようなことを、菊池寛「文藝春秋」創刊という出来事とその語られ方に関する問題を具体例に論じた文章。


「書くことの倫理―大岡昇平『俘虜記』論序説―」(「語文論叢」28、2013・7)
6年前に戦争の記憶と文学、といったテーマの本を刊行したときに、そんなテーマを扱うなら、やっぱり大岡を論じなくては、というようなご意見を頂戴したままになっていましたが、ようやくそのご意見に応えるための第一歩を踏み出してみた、というところ。

『俘虜記』という小説の中に織り込まれている「書く」という行為に注目しつつ、そこで貫かれている倫理的な態度を、戦場における性暴力の問題に言及した箇所に注目しつつ論じたもの。とりあえずの「序説」なので、このあときちんと本論を書き継いでいきたい。


〔その他〕
「〈研究展望〉個人作家研究会に関する私感」(「昭和文学研究」66、2013・3)
編集委員会の求めに応じて、個人作家研究会の現状とこれからについて記した文章。坂口安吾研究会の事務局を担当しながら、最近考えたことを記す。


「〈展望〉大学における文学教育と教科書」(「日本近代文学」88、 2013・5)
同じく編集委員会の求めに応じて、日本近代文学研究という学問領域の中で近年刊行されているいくつかの大学生向け教科書について私見を述べた文章。


雑誌「月刊にひがた」総目次(上)(「人文研究」42、2013・3)
坂口安吾の兄である坂口献吉が社長・取締役を務めていた新潟の地方新聞社・新潟日報社が1946年に創刊した雑誌「月刊にひがた」の総目次と解題。安吾は敗戦直後の献吉宛書簡で地方雑誌の必要性を説き、それに応えるようにして新潟日報社は雑誌を創刊した。なお、続編は来年刊行の次号に掲載予定。


坂口安吾新資料紹介「伊藤昇宛書簡」、「若園清太郎『バルザックの精神』出版記念会案内ハガキと芳名帳」坂口安吾研究会編『坂口安吾 復興期の精神』、2013・5、双文社出版)
伊藤昇はアテネ・フランセ時代の安吾の同級生で、作曲家・トロンボーン奏者。初期の安吾が関心を寄せたエリック・サティ安吾に紹介したのではないか、とされる人物。書簡は安吾が雑誌「櫻」に参加したころのもので、伊藤が同誌に寄稿したことへの礼を述べつつ、音楽と文学の共同作業としてのオペラへの関心を記すもの(明治学院大学図書館附属日本近代音楽館蔵)。
若園清太郎も同じくアテネ・フランセ時代の同級生。若園の著書刊行を祝う記念会に安吾が発起人として関わったことを示す案内ハガキと当日の芳名帳を紹介(アテネ・フランセ蔵)。